研究業績– category –
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論文
長野県中部における断片化した小規模ブナ林の更新動態|Oct. 2025
松本市牛伏寺のブナ林は、 過去のスズタケ被圧と現在のシカ食害により、低木層や稚樹におけるブナの生育が阻害され、更新が停滞していました。過去約20年間(2005-2024年)でブナの豊作がなく、これは、遺伝的多様性の低下による稔性(種子ができる能力)の低さが考えられ、次世代を担う種子自体が不足しています。今後、ブナ林の維持は困難であり、稚樹が多いナラ類主体の林へ遷移すると予想されますが、シカ食害が続けばナラ類の更新も停滞する恐れがあります。 -
論文
年輪の視認性向上:温帯樹種62種を対象としたサンプル処理および画像化技術の比較研究(英文)|Oct.2025
樹木の成長情報を得るには年輪境界の明瞭な視認が必要ですが、散孔材など境界が不明瞭な樹種では技術的課題が残ります。本研究は東アジアと北米の温帯樹種62種を対象に、サンプル調製法と画像化技術を比較しました。可視光下での二重染色薄片が最も明瞭で、次いでチョーク併用のミクロトーム処理が有効、蛍光法ではUVが最良でした。二重染色は技術を要しますが、信頼性と効率に優れ、年輪研究の拡大に寄与します。 -
研究
松本市牛伏寺ブナ林における気象要素(林内気温・最深積雪・積雪日数)の18年間(2003~2021年)の年次変動|Apr.2025
長野県松本市の牛伏寺ブナ林で、2003~2021年の18年間にわたり、林内気温・積雪深・積雪日数の変化を調べました。年平均気温は10.2℃で上昇傾向があり、最深積雪は平均30cm(最大100cm)でしたが、16冬のうち8冬は積雪がありませんでした。小規模で孤立したブナ林の変化や生物多様性への影響を考えるための、重要な基礎データを示した研究です。 -
研究
松本市牛伏寺ブナ林における20年間(2005~2024年)のブナ繁殖器官の生産量(英文)|Apr.2025
長野県松本市の孤立したブナ林において、2005〜2024年の20年間にわたるブナの繁殖器官生産を継続的に記録したデータ論文です。種子生産量は年変動が極めて大きく、豊凶の顕著なマスティング現象が確認され、虫害や不稔種子の割合も年ごとに大きく異なりました。 本データセットは、森林の孤立化や気候変動がブナの繁殖成功に及ぼす影響を評価するための基礎資料を提供します。 -
研究
北東アジアの温帯林における樹木成長の気候応答の空間的異質性(英文)|Mar. 2025
北東アジアの温帯林79地点・22樹種の年輪データから、樹木の成長が気候にどう反応するかを広域的に評価しました(信州大学森林生態学研究室が管理するカヤの平と広島県臥龍山[苅尾山]のブナ林2サイトのデータを提供)。成長に対する反応の違いは水ストレスが主要因であり、乾燥地域ほど降水減少や高温・乾燥に対して成長が大きく低下する傾向が示されました。今後の乾燥化の進行により、森林生産性の広域的な低下が懸念されます。 -
研究
日本の天然林22カ所の樹木調査プロットにおいて、UAV(無人航空機)搭載LiDARから作成された高解像度のデジタル樹高モデル、地形モデル、オルソモザイク写真、および樹冠形状データ(英文)|Feb.2025
日本各地22か所・各1ha(モニタリングサイト1000)の森林で、ドローン(UAV-LiDAR)を使い、5cm解像度の地形・樹高データと2.7cm解像度のオルソ画像(空中写真)を取得しました。調査地は亜熱帯から亜寒帯まで幅広い気候帯に及び、このうち信州大学森林生態学研究室が管理するカヤの平のブナ林と、志賀高原おたの申す平の亜高山帯針葉樹林の2サイトのデータを提供しました。全151種・4,328個の樹冠データを含む、日本の自然林を対象とした初めての大規模データで、さまざまな森林研究に活用できます。 -
研究
北八ヶ岳坪庭溶岩台地に成立するハイマツ群落の組成と構造|Jan.2025
北八ヶ岳・坪庭の溶岩台地(2250 m)では、通常は森林限界より上に生育するハイマツが、より低い標高で群落を形成しています。溶岩台地の周縁部から中心部にかけて26区画で植生調査を行った結果、周縁ではコメツガが優勢ですが、中心ではハイマツが増加しており、ハイマツが主要な先駆樹種として定着したと考えられます。これはコケやガンコウランのマットがハイマツの実生定着を助け、現在の分布を形成したためと推察されます。 -
報告
信州大学教育学部長野キャンパスの樹木|Oct.2024
信州大学教育学部キャンパスの木本植物を2023年に調査したところ、95種が確認されました。これらの樹木は、景観・環境・学習素材など、学生や教職員、地域住民に対して多様な価値を提供するものです。 教育活動への活用や日常生活での利用など、多面的な可能性を有していることが示唆されました。 -
論文
東北の豪雪農村地域における伝統木造民家の適材適所の樹種選択(英文)|May.2023
豪雪地域である福島県只見町において、1845〜1940年頃に建てられた11軒の木造農家に使用された構造材の樹種を特定しました。2000点以上の部材から14種が確認され、主要材はスギ44%、ゴヨウマツ39%で、重要な構造部に広く使われていました。ブナは7%で梁や桁に利用されていました。住民への聞き取りから、材は1km以内の私有林や共有林から伐り出され、地元の職人が選木・搬出していたことが判明しました。雪崩の多い複雑な植生環境でも、入手可能な高木種を選んで家屋材として利用していたと結論づけられます。 -
研究
長野県小谷村に残る伝統的茅場の昆虫相(続々報): 2020年から2022年の調査結果|Mar.2023
長野県小谷村の伝統的茅場「牧の入茅場」にて、2020年から2022年にかけて昆虫相調査を行い、合計14目128科505種を記録しました。2022年には285種が確認され、そのうち114種が本調査地における新たな追加記録でした。特にコウチュウ目・ハチ目・チョウ目で多くの新記録が得られています。また、バッタ類の疫病による大量死や、ハナバチ類の営巣活動およびそれに伴う捕食・寄生関係など、生態学的にも興味深い現象が観察されました。
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