長野県飯山市では、2004年から「ナラ枯れ」と呼ばれる現象が顕著になってきました。これは、ナラやカシなどの木が夏から秋にかけて急に枯れてしまう病気で、カシノナガキクイムシという虫が運ぶカビの一種(Raffaelea quercivora)が原因です。
実は、同じような被害が約250年前の1750年にも起きていたことが、古文書から明らかになりました。ある神社の森では、夏になると多くのナラの木の葉が変色しはじめ、秋にはほとんどの木が枯れてしまったと記されています。当時の人々は、木の幹に虫が入り込んでいるのを確認したものの、駆除する方法がなかったようです。
さらにその記録には、翌年に直径20~35cmほどのナラの木35本が売却され、そのお金で神社の建物を修復したことや、他の枯れた木から約9トンもの木炭がつくられたことも書かれていました。
これらの情報から、当時の枯死被害も現在と同じく、カシノナガキクイムシが原因の伝染病だった可能性が高いと考えられます。つまり、この虫は江戸時代以前から日本に生息していたとみられ、ナラ枯れのような被害は、大きな木が多く生えている神社の森などで、繰り返し起きていたのではないかと推測されます。
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ナラ枯れは江戸時代にも発生していた
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