東北地方の雪深い農村地域における伝統的民家の構造材に適した樹種選択の最適化

東北地方にある豪雪地帯・只見町では、昔から地域の森で育った木を使って農家の家が建てられてきました。これらの古民家には、かつての森林資源の使い方に関する重要な手がかりが残されています。

この研究では、1845年から1940年ごろまでに建てられた11棟の木造農家を対象に、家に使われている木の種類を調べるとともに、地域住民70人への聞き取り調査を行いました。

その結果、計2,004点の木材部材(1棟あたり99〜308点)を記録し、そのうち1,828点(合計171.2立方メートル)の木材の樹種を特定しました。確認された樹種は14種類に及びます。

とくに多く使われていたのは:

  • スギ(Cryptomeria japonica):全体の44%
  • ゴヨウマツ(Pinus parviflora var. pentaphylla):全体の39%
  • ブナ(Fagus crenata):全体の7%で、屋根や梁(はり)などに利用

聞き取り調査からは、木材はほとんどが自分たちの山や共有林など、家の近く1km圏内の森から伐り出されたものであること、そして地元の職人が木を選び、運んでいたことがわかりました。

この地域は雪崩が頻発するため、植生(植物の種類や分布)が複雑ですが、大きな木が育つ場所を上手に管理し、使える木を見極めて利用していたと考えられます。とくにスギは最も手に入りやすい木材だったと推測されますが、それが自然林なのか植林されたものかは不明です。集落の周囲の尾根にはゴヨウマツも自生していたとみられます。一方、ブナのように大きな材を得るには量的に限界があった可能性もあります。

こうした調査から、厳しい雪国の環境のなかでも、地元で手に入る立派な木を選んで家を建てていたことが明らかになりました。

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