長野県の雪深い農山村で、ブナの花や実の量と、住宅地に出没して人間に駆除されたツキノワグマの数との関係を、15年間にわたって調べました。
ブナは春に雌花(めばな)や雄花(おばな)を咲かせ、秋に「堅果(けんか)」と呼ばれる実をつけます。調査した3か所の森では、これらのブナの花や実の量は毎年ほぼ同じように増減しており、それぞれの量も互いに密接に関係していました。
そこで、クマの出没が多くなる時期(5〜7月、8月、9〜11月)ごとに、ブナの前年の実の量やその年の雄花の量が、クマの出没数にどう関係しているかを統計的に分析しました。
その結果:
- 5〜7月(春〜初夏)のクマ出没は、前年の実の量や今年の雄花の量とは関係がありませんでした。
- 8月(夏)には、雄花の量が少ないほどクマの出没が増える傾向がありました。
- 9〜11月(秋)には、前年の実の量が少なく、かつ今年の雄花の量も少ない年に、クマの出没が増える傾向が見られました。
このことから、その年の夏から秋にかけて、森の中に落ちている雄花の量を7月までに観察することで、クマの出没リスクを予測できる可能性があると考えられます。
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A 15-year study on the relationship between beech (Fagus crenata) reproductive-organ production and …
The relationship between beech (Fagus crenata) reproductive-organ (female flowers: FFs, male inflorescences: MIs, and filled masts: FMs) production and the numb…